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「‥‥冷える訳やね」

窓越しに散らつく粉雪。一面を白く覆い隠す雪に、街並がしばし自然に帰る。
静留はガラス窓を開いて、凍えた風を微かに受けながら外を眺めた。雪雲は明るい。深く積もってしまえば綺麗と言ってばかりもいられず、色々と大変なのだが、畏怖すべきものの姿を見るようでやはり雪景色には目を奪われる。
遠くから、じゃあっと湿った音が聞こえる。視線を落とすとマンションのベランダから眼下に見える道路を自動車がノロノロと行き過ぎて行く。汚れた雪の中の黒い轍。
ふう、とひとつ溜め息を落とし、それが白く掻き消される中、静留は窓を閉めた。

天気が良ければバイクで出掛けようとなつきと約束していたのだが、これでは無理だ。昨夜から天気が崩れそうなのは解っていたので、まあ仕方がないと言えば仕方がない。
時計を見れば7時半。休みだし、まだなつきは眠っているだろう。
テレビを付け、チャンネルを変えて天気予報を見ると、明日まで雪は続くとの予報。かなり積もりそうだ。
静留はもう一度カーテンを開けて窓の外を眺めた。幾重にも落ちて来る柔らかな白い色。

冬の雨は冷たくて、ひとりが似合う。
冬の雪は冷たいのに、どこか暖かくて誰かといたい。

逢いに行こうか。

なつきが起きた頃に電話をしてみようと思いながら、静留は降りしきる粉雪を見つめた。




「おはようさん。起きてはった?」
『ああ。雪だな』
「せやね。よう降ってはるわ」

受話器の向こうからの声に、水音が混じる。じゃぁっ、と自動車が溶けかけた雪の轍を踏む音。

「‥‥今、外?」
『うん。ちょっと散歩だ』
「散歩て」
『そうだなぁ、あと30分くらいで着くかな』
「え、家に?」
『まずかったか? 約束した時間だろう?』
「まずい事あらへんけど、何処か出先なん? それとも電車止まっとるん?」

なつきの部屋から静留の部屋まで直接来るのなら、いくら雪で電車が徐行運転をしていても30分は掛からない。

『いや。電車は知らないけど』
「ひょっとして散歩って、家まで?」
『うん』
「何してますのん」
『いや、なんか‥雪だから』

何となく照れたような口調のなつきに、静留はふと吹き出してしまい窓の外を見た。気温が上がっているのだろう。朝方よりも雪片が大きくふわふわとしている。

「今どこ?」
『国道と大通りの交差点。裏通りに入る手前だ』
「せやったら、公園の辺りで待ってるさかい」
『え? いやおまえまで来る事ないだろう?』

困惑したような声のなつきに、静留は笑って答えた。窓の外に舞う空の羽毛。

「せやなあ。でも、雪やから」



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